【モバイルバッテリーの容量計算】mAhと消費電力から持続時間を導く

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暮らしの中に浸透しているモバイルバッテリーは、アウトドアにおいても脚光を浴びています。
スマホの充電だけでなく、LEDライトや撮像機材などキャンプでも電気の力を大いに活躍します。

しかし充電がなくなると非常事態となり兼ねないため、モバイルバッテリーなどの備えは重要です。

今回は、使用する機器から必要なバッテリー容量を計算する方法を紹介しましょう。

モバイルバッテリーの容量表示

モバイルバッテリーには多くの種類があります。
スマホの予備充電用途など室内での使用を想定されているものから、防水性や耐久性を備えたアウトドア仕様のものまで様々です。

ガレージ系アウトドアモバイルバッテリー『ネストアウト/エレコム』
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モバイルバッテリーを選ぶ時、防水性などの特殊用途を除くと、まず確認すべきスペックは充電容量です。

充電容量はmAhという単位で数値表示されることが一般的ですが、この数値だけで最適な容量判断を行うのは困難ですよね。

代替表記としてスマホへの充電回数が補足されている商品もありますが、スマホ充電以外の用途の場合には十分な容量があるかを判断するためには容量計算の知識が必要です。

モバイルバッテリーの容量計算

容量計算を行うために、まずmAhという単位の意味について確認しておきましょう。

(画像出典:Amazon)

mAh(ミリアンペアアワー)とは

電流はA(アンペア)という単位で表され、m(ミリ)は1/1000という意味を持つことから、mAはAの1/1000となります。
hはhourの頭文字で1時間を意味しています。

mAとhが掛け合わされた単位がmAhで、この単位の意味するところは「1時間で流し切る条件下での電流値(mA)」となります。

具体的に例えると、満充電から空になるまでの時間が1時間という条件の場合、5,000mAhのモバイルバッテリーが放電する電流値は5,000mAとなります。
同じ5,000mAのモバイルバッテリーでも倍の2時間で流し切る条件の場合には、放電される電流値は2,500mAとなります。

 mAh = mA × h

何時間で流し切るのかという条件は、接続する機器を稼働させるためにどれ程の電力が必要かによって概ね決まり、言い換えると、接続する機器が必要とする電力によって何時間電力が供給できるかが決まるという事になります。

Wh(ワットアワー)とは

モバイルバッテリーの充電容量と接続する機器が必要とする電力が分かれば、モバイルバッテリーの必要容量、つまり電力を供給できる時間が計算できると言う事ですが、そのためには異なる電力表示の単位を統一する必要があります。

 mAh ⇔ W

モバイルバッテリーの容量はmAhで表示されます。
これに対し、LEDやファンなどの機器側では消費電力W(ワット)という単位が用いられます。

 W = 電流A × 電圧V

容量計算をするためには、モバイルバッテリーの充電容量をWを用いた単位「Wh(ワットアワー)」に変換していきます。

 mAh → Wh

モバイルバッテリーで電気毛布は何時間使える?

ここからは具体的に数字を当て嵌めながら確認していきましょう。

手元に10,000mAhのモバイルバッテリーと、冬キャンプで使用を考えているUSB式電気毛布があるとします。
電気毛布はヒーターパネルを6枚も備える高加温仕様で、消費電力は最大9.5Wです。

モバイルバッテリー USB式電気毛布
充電容量:10,000mAh 消費電力:9.5W

まずモバイルバッテリーの充電容量の単位をmAhからAhに変換します。

 10,000mAh × 1/1000 = 10Ah

次にW=A×Vを用いてWhへ変換しますが、そのためには電圧Vの値が必要です。

モバイルバッテリーのスペックに定格電圧という項目があればその値を用いますが、バッテリーの種類により基準となる電圧値は決まっていますので、現在主流となっているリチウムイオンバッテリーであれば3.7Vを使用して計算することも出来ます。

 10Ah × 3.7V = 37Wh

ここまでくればあとは電気毛布の消費電力で割るだけ・・・と思われますが、実はここでもうひとつ考慮しなければならない事があります。

変換ロスと実効値

リチウムイオンバッテリーの定格出力は3.7Vですが、放電や充電で使用するUSBポートは、USB規格により5Vと定められています。
そのため、他の機器へ給電(放電)する際には3.7Vから5Vへ昇圧する必要があり、反対にモバイルバッテリーを充電する際には5Vから3.7Vへ降圧する必要があります。

昇圧、降圧はユーザーが意識することなく行われますが、この時、変換ロスと言われる損失が発生するため、実質的に充電容量が減少します。

変換ロスによる充電容量の実効値は、品質の良いバッテリーでも一般的に70%程度と言われていますので、容量計算ではこの70%を忘れずに適用しなければなりません。

ここまでで10,000mAhのモバイルバッテリーの充電容量は37Whと算出してきました。
ここに実効係数70%を適用すると、放電容量実効値は25.9Whとなります。

 37Wh × 0.7 = 25.9Wh

電気毛布の消費電力は9.5Wなので、使用可能時間は概ね3時間弱という事になります。

 25.9Wh ÷ 9.5W = 2.7h → 2時間40分

この結果から、10,000mAhのモバイルバッテリーと9.5WのUSB式電気毛布の組み合わせでは、テント泊一晩を暖かく過ごすには容量不足と判断できます。

一晩(6時間)を温かく過ごすのであれば、20,000mAh以上の容量確保が必要とわかります。

まとめ

モバイルバッテリーの充電がもつ時間は、モバイルバッテリーの充電容量と接続する機器の消費電力から求めることが出来ます。

計算には単位を揃える必要があり、モバイルバッテリーの容量を表す単位mAhをWhに変更します。

変換した容量値は変換ロスを含めた実効値へ換算し、機器の消費電力の和で割ることで稼働時間の目安を求めることが出来ます。

 実効容量Wh = 充電容量mAh × (1/1000) × 3.7V × 0.7
 稼働時間h = 実効容量Wh ÷ 消費電力の和ΣW

今回の計算方法はあくまで稼働時間の目安の算出方法となります。
バッテリーは低温下で出力が低下する特性があり、また配線の長さなどによる抵抗も出力低下の要因になります。

特に今回紹介したような寒冷地での使用を想定されている場合は、十分余裕のあるバッテリー容量を準備しましょう。

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