非日常の生活を楽しむキャンプ。非日常の生活に追いやられる災害時。
どちらの生活でも欠かせないモノのひとつに電気があります。
スマホやライト、暖房器具などが使えない生活は、体力だけでなく精神的にも不安になるでしょう。
そんな非日常の生活の備えとして役立つアイテムがポータブル電源です。
ポータブル電源には多くの種類があり、いざ準備しようと思ってもどれが最適か判断が難しいと思います。
今回はポータブル電源を選ぶ時のポイントと、キャンプや災害時に欠かせない防水性能を備えたポータブル電源を紹介しましょう。
ポータブル電源とは
ポータブル電源は、内部のバッテリーに電気を蓄え、いつでも電気を取り出すことが出来る機器です。
蓄電(充電)と出力(電力供給)が主な機能で、発電能力はありません。
例えば真冬に電源のないサイトでキャンプする場合でも、ポータブル電源があれば電気毛布やホットカーペットで暖をとることが可能です。
よく似た機器にモバイルバッテリーがありますが、モバイルバッテリーと大きく異なるのは蓄電容量と出力の汎用性、それはつまり用途です。
昨今のモバイルバッテリーは容量が増大し、10,000mAを超えるモバイルバッテリーも多くありますが、一般的なポータブル電源はその10倍以上の容量を備えます。
更にUSB出力を基本とするモバイルバッテリーに対しポータブル電源はAC出力なども備えるため、電子機器だけでなく電化製品への電力供給も可能です。
これはコンセントなどの出力ポートの形状の違いだけでなく、電圧、電流値と言った根本的な出力性能の違いで、モバイルバッテリーとポータブル電源には容量だけでない大きな違いがあります。
スマホやLEDライトなどの予備バッテリーとしてであればモバイルバッテリーでも十分事足りますが、キャンプや災害時の使用を考えるとポータブル電源でなければ対応出来ない事も多くあるでしょう。
ポータブル電源を選ぶ時のポイント
ポータブル電源には多くの種類があります。
メーカーも機種も多く、もちろんスペック差もあるため、用途に合うポータブル電源を探すには知識が不可欠です。
専門的な知識を持っていた方が良いのは間違いないですが、今回は電気の知識が少ない方でも自分に合うポータブル電源が選べるよう、確認すべきポイントとそれぞれのスペックの意味などを簡潔に紹介しています。
容量と出力効率
蓄電量を示す容量サイズは、ポータブル電源の絶対的な指標です。
貯水タンクで例えるならどれだけの水が溜められるのかを示すもので、容量が大きいものほど多くの電気を蓄えられ、長い時間機器を稼働させることが可能になります。
ポータブル電源の容量には、仕事量(W)と時間(h)を掛け合わせた「Wh(ワットアワー)」と言う単位が用いられます。
電気を供給する機器の消費電力(W)と非常に相性の良い単位なので、使用する機器が決まっている場合には十分な容量がどれくらいか、またはこの容量でどれくらい機器を動かせるのかを簡単に計算することが出来ます。
具体的な算出方法を見た方が判り易いと思いますが、その前に出力効率について触れておきましょう。
出力効率とは
出力効率は、バッテリーの容量に対して実際に出力として使用出来る電気容量の割合を表す値です。
しかし実際に充電できる領域は100%ではなく、更に内部回路の制御やモニター類の表示、安全検知や冷却などにも電力が使われ、また出力変換ロスなど様々なプロセスで電力は消費されます。
これらはもちろんポータブル電源に蓄電された電気が使用されるため、実際に出力として使用出来る電気容量はポータブル電源の駆動電力やロスを引いた分となります。
出力効率は、効率の良いポータブル電源でおよそ80%と言われ、つまり20%分は外付け機器を動かすための電気として活用することは出来ません。
そのためポータブル電源の容量値から使用する機器がどれくらい動かせるのかなどを算出する際には、この出力効率の考慮を忘れてはいけません。
それでは具体的な例で算出方法を見てみましょう。
ポータブル電源の出力効率を80%と見込むと、実際に使える電気容量は400Wh×80%=320Whとなります。
ホットカーペットの消費電力、つまり1時間に消費する電力量は60Wなので、320Wh÷60W≒5.3時間となります。
実際には常に60Wを消費し続けることはなく、保温対策をすれば消費電力を落として稼働時間を延ばすことも出来ますが、スマホの充電やLEDライトの充電など他の機器を繋げれば電気の消費量は増えていきますので、どのような使い方が想定されるのかを考え最低限必要な容量を決める事が大切です。
出力/OUTPUT
蓄電した電気を他の機器へ給電する方法を示したものが出力です。
出力の種類としてはUSB、AC、DCの3種が主流で、一般的なポータブル電源にはいずれも用意されているでしょう。
スマホや電気毛布などの給電に対応します。TYPE-AやTYPE-Cなどポートタイプに種類がありますが、そこまで憂慮する必要はないでしょう。
AC
ホットカーペットなど家電向けの交流電源です。ポータブル電源の主力となる出力で、後述する波形や定格出力の確認もポイントです。
DC
変換ロスの少ない直流電源です。家電やキャンプ用品の多くはACまたはUSBのため、需要はあまり高くないでしょう。
ポータブル電源で最も有用な出力はACです。
ACは家電製品に対応する出力で、特に被災時には一時的にでも家電が使用出来るのは救いとなります。
しかし、ACがあるから大丈夫と言う訳ではありません。
ACの電気特性となる波形と定格出力の確認はとても重要です。
ACは正弦波、純正弦波を選ぶこと
ACは交流と呼ばれる種類の電源です。
交流はプラスとマイナスを行き来する波のような電気ですが、ポータブル電源内ではいわゆる直流の状態で蓄電されているため、AC出力の際はこれを交流に変換しなければなりません。
変換のための電気回路には種類があり、端的に言うと価格に比例して生成される交流波形の精度が異なります。
精度は異なっていても交流は交流ですが、精密家電の中には精度の低い交流では動かないものもあるため、手持ちの家電やこれから入手する家電の適応範囲がわからない場合には精度の良い交流波形である「正弦波または純正弦波」から選びましょう。
ACは定格出力も確認すること
ACには定格出力と最大または瞬間出力という値が記載されます。
簡単には、定格出力は常時出力できる合計電力で、最大または瞬間出力は瞬間的に出力できる最大合計電力を表しています。
いずれもこれら合計電力値を上回る出力をポータブル電源は出せないため、消費電力の大きな機器やたくさんの機器を繋ぐ場合などはこれら合計電力値が制限となります。
例えば定格出力400Wのポータブル電源では、消費電力1000Wのドライヤーを機能させることが出来ません。
ポータブル電源は大容量且つたくさんの機器を一度に使える事が強みのひとつですが、出力ポートの数が多くても定格出力が低かったり交流波形の精度が適さなければ結局全ての機器を稼働させることが出来ないため、AC出力の定格出力と波形精度は確実に確認しましょう。
50Hz/60Hzとは
交流電源であるACには周波数という特性があります。
これは波の周期が1秒間に何回繰り返されるかを示した特性値で、単位にHz(ヘルツ)を使用します。
日本では西日本が60Hz、東日本が50Hzと区分けされており、引っ越しなどで周波数帯域が変わる場合は注意が必要と言われていました。
ポータブル電源から出力されるACにも50Hz/60Hzの周波数特性がありますが、この周波数の違いはどのような影響を及ぼすのでしょう。
ひとつは接続する家電への影響が考えられます。
特に危険な家電は電子レンジで、対応周波数と異なる電源を投入すると発火することもあります。
ただ昨今の家電は50Hz/60Hz共用のものがほとんどで、特別長い間使用している電化製品でなければ余程影響はないでしょう。
もうひとつは付加価値的な内容ですが、60Hzよりも50Hzの方が変換ロスが少ないため、50Hzの方が長い時間供給することが出来ます。
選択出来るのであれば50Hzの方がメリットがありますが、どちらも特段デメリットはないため、周波数に対して憂慮は不要でしょう。
充放電サイクル
バッテリーは様々な要因で劣化をします。それは、環境の良い場所で保管し、正しい使用方法を守っていても必ず劣化します。
充放電サイクルはポータブル電源を正しく使用していても起こる劣化のひとつで、バッテリーの充放電回数による劣化時期を表す指標です。
具体的には空のバッテリーを100%まで充電し、更に空になるまで使用した事を1サイクルとカウントする時、バッテリの劣化が顕著に表れるまでの回数が充放電サイクルです。
但し間違えてはならないのは、充放電サイクルを超えたらバッテリーが使えなくなる訳ではありません。
確かに劣化しますが、まだまだ使えるレベルです。
もちろん充放電サイクルは多いに越したことはありませんが、年間どれくらい使うのか、家電の寿命をどれくらいと想定するのかなど、使い方に合わせて充放電サイクル数を検討するのも大切です。
PSEマーク
ポータブル電源は高いエネルギーを蓄える機器であるため、落下や破損、異常時には発熱や発火、爆発など大変危険な事故に繋がります。
リスクや不安を取り除くためにも、堅牢な構造や安全回路による保護など安全性や信頼性の高い機器を選ぶことが第一です。
電気用品の場合は安全性や信頼性の判断基準のひとつに、PSEマークがあります。
PSEマークはPSE安全基準の認証を受けたことを示すマークです。
ポータブル電源はPSE認証は義務化されていないため、PSE認証を受けていなくても国内での販売制限はありませんが、任意の基準だからこそしっかりPSE認証を取得したものは製品としてだけでなくメーカーの安全責任意識の強さを表します。
まとめ
- 用途に合わせたバッテリー容量を確認しましょう。
- 容量計算では出力効率を考慮しましょう。
- 出力では特にAC電源が正弦波または純正弦波であることを確認しましょう。
- AC電源の定格出力は接続機器の消費電力より高いことを確認しましょう。
- 放電サイクル数は大きい物の方が良いが、とらわれ過ぎないようにしましょう。
- PSE認証を受けた機器から選びましょう。
防水性能
ここまでポータブル電源を選ぶ基本的なポイントを紹介してきましたが、キャンプや災害時の備えとするのであれば忘れてはいけない性能が「防水性能」です。
防水性能は一般的にIPという国際規格で等級表示され、IPの等級は2桁の数字で防水と防塵の防護性能をそれぞれ表します。
IPX0 保護されていない IPX1 垂直に落ちてくる水滴による有害な影響がない IPX2 垂直から15度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない IPX3 垂直から60度の範囲で落ちてくる水滴による有害な影響がない IPX4 あらゆる方向からの飛沫による有害な影響がない IPX5 あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない IPX6 あらゆる方向からの強い噴流水による有害な影響がない IPX7 一時的に一定の水圧(水深)で水没しても内部に浸水しない IPX8 継続的に水没しても内部に浸水しない
(参考:ソフトバンクニュース)
IP0X 保護されていない IP1X 直径50mm以上の大きさの固形物が内部に入らない IP2X 直径12.5mm以上の大きさの固形物が内部に入らない IP3X 直径2.5mm以上の大きさの固形物が内部に入らない IP4X 直径1.0mm以上の大きさの固形物が内部に入らない IP5X 有害な影響が発生するほどの粉塵が内部に入らない IP6X 粉塵が内部に入らない
(参考:ソフトバンクニュース)
IPの数字はそれぞれ別の防護性能を表しますが、いずれも数字が高いほど性能が優れます。
特に1桁目の防水性能は、アウトドアや災害時など屋外での使用や持ち出しが想定される場面では重要です。
多少の雨や結露などで壊れるようでは備えになりません。
防水性能はIPX3以上の性能を持つポータブル電源を選びましょう。
防水ポータブル電源の紹介
数多あるポータブル電源ですが、防水性能を備えたポータブル電源は限られています。
ここではIPX3以上の防水性能を備え、PSE認証を受けた安全、安心のポータブル電源を紹介しましょう。
LACITA / ラ・チタ
エナーボックス [防沫タイプ]
ENERBOX01-SP
サイズ | 303×134×184mm |
容量 | 444Wh |
バッテリー | 三元系リチウムポリマー |
充放電サイクル | 500回以上 |
出力 | AC出力:3x100V/4A、合計400W(瞬間最大600W) タイプ:純正弦波 USB-A×3:合計5V/2.1A DC出力:9~12.6V/110W |
防水性能 | IP44 |
重量 | 約5kg |
PowerArQ / パワーアーク
ポータブル電源
PowerArQ 3 555Wh
AC出力は合計500Wの2口仕様で、周波数切り替えが可能な純正弦波仕様です。
急速充電やワイヤレス充電にも対応し、見た目の可愛さ以上に高機能。
バッテリー交換が可能なため、容量の追加を低コストで行えるのも魅力です。
専用バッグを使用すれば、雨天時の運搬での故障リスクを低減できます。
サイズ | 295×225×230mm |
容量 | 555Wh |
バッテリー | リチウムイオン |
充放電サイクル | 約500回 |
出力 | AC出力:2×100-120V/5A、合計500W(瞬間最大1000W) タイプ:純正弦波、50/60Hz(切り替え可) Quick Charge3.0×2:5VDC/3A,9VDC/2A,12VDC/1.5A(合計36W) USB-C×1:5/9/12/15/20V,3A USB-A×4:5V/3A DC出力:12V/10A(11-14VDC使用可能) ワイヤレス充電×1:5W/7.5W/10W/15W |
防水性能 | IP33(端子カバー装着時) |
重量 | 約7.9kg |
カラー | 4種(オリーブドライブ、コヨーテタン、チャコール、レッド) |
BLUETTI / ブルーティ
AC60
サイズ | 290×205×234mm |
容量 | 403Wh |
バッテリー | リン酸鉄リチウムイオン |
充放電サイクル | 3,000回以上 |
出力 | AC出力:2x100V/6A、合計600W(瞬間最大1200W) タイプ:純正弦波 USB-C×1:5/9/12/15/20V,3A;20V,5A USB-A×2:合計5V/3A DC出力:12V/10A ワイヤレス充電×1:5W/7.5W/10W/15W |
防水性能 | IP65 |
重量 | 約9.1kg |