アウトドアで使用する燃料にはホワイトガソリンやガス、灯油などがありますが、これから燃料を用いた燃焼系の機器を使っていこうとお考えの方は、どの燃料をベースにしようか迷うのではないでしょうか。
この記事では初めて燃焼系機器を持つ方が最初に手にするであろうホワイトガソリンとガスについて、それぞれの燃料の特徴を比較しながら解説します。
最終的にどちらかの燃料が優れているという結論には至りませんが、それぞれの燃料の得意/不得意を知ることは燃料や機器の選定に大いに役に立つでしょう。
ホワイトガソリンとLPガスの特徴比較
はじめに、アウトドアやキャンプにおいて燃料は必須アイテムではありません。
もともとキャンプとはサバイバル術のひとつであり、自然にあるものだけを利用して生き延びることが求められた行動です。
そのため、ボーイスカウトや林間学校などでのキャンプ実習では燃料はもちろん炭なども使いません。
燃料を使う目的は、より便利で快適に過ごすための方法のひとつなので、本来の考え方では優先度が低いアイテムになります。
とは言っても現代のキャンプでは燃料の使用が一般的になっています。
それは利便性だけでなく燃焼系機器特有の魅力があるからです。
その魅力を最大限に楽しめるよう、それぞれの燃料の特徴を確認しましょう。
燃焼系機器の種類
燃料を使用する代表的な機器はランタンとバーナーです。
燃焼系のランタンは大光量の明るさや灯の揺らぎ、燃焼音が魅力で、バーナーは調理の効率が格段に向上するために、多くのキャンパーが虜になっています。
主にこれらの道具で燃料を利用することになりますので、燃料を統一したい方は将来扱うであろう道具まで考え燃料を選ぶようにしましょう。
比較1.燃焼の仕組みと火力の安定性
燃焼系機器の燃焼の仕組みを簡単に説明すると、燃料タンク内の燃料が圧力によって燃焼部に押し出され、押し出された燃料が燃えることで熱や光を発すると言ったメカニズムです。
(画像出典:Coleman)
そのためポンピングという作業でタンク内を加圧し、その圧力で燃料を押し出します。
タンクから押し出された燃料はジェネレーターと呼ばれる部位を通り燃焼部へと届けられます。
その際、燃焼部の熱を受けたジェネレーターが液体燃料を気化させ、更に空気と混ざり合わせることで燃焼部ではきれいな炎となり燃えます。
一方ガス機器は常温で気化する液体ガスが収容されたガスカートリッジを装着する構造のため、燃料の供給はカートリッジの内圧が担います。
ガス機器においてはノブを捻れば自動的に燃焼部へと燃料が届けられ、すぐに燃焼させることが出来ます。
ポンピング作業やアナログ的な点火方法が必要なホワイトガソリン機器に対し、ガス機器は捻って着火するだけとシンプルな作業で、取り扱い易さでみるとホワイトガソリン機器よりガス機器の方が簡単だと言えるでしょう。
然しながら一般的にガス機器はホワイトガソリン機器に比べて低温化での火力が弱いと言われます。
それはガスカートリッジ内の温度が低下することで液体ガスの気化が抑制され、カートリッジ内の圧力が低下することが原因です。
手動で加圧出来ないガス機器は低温下や残ガスが少なくなった時に出力が低下することは否めず、それは手軽さの代償として認識しておく必要があります。
冬キャンプや高所キャンプなどの寒冷地でのシチュエーションが予想される場合は、ガス機器よりもホワイトガソリン機器の方が火力の面では安心できるでしょう。
ドロップダウン対策
ガス機器の場合、上述したような寒冷地での火力低下の他にも連続使用することでカートリッジの温度が低下し、火力低下が起こります。
この現象をドロップダウンと呼び、ガス機器においてはいわば弱点になります。
然しこの弱点を補う方法、仕組みもあるため、いくつか紹介しましょう。
- 燃焼熱を利用してガスカートリッジを温めるパワーブースター機構
- 燃料を液体の状態で供給する液出し型ガス機器
- 気化温度が低く内圧が低下しにくいイソブタンガスカートリッジを利用する
詳細はまたの機会としますが、いずれの方法もガスカートリッジの内圧低下の影響を減少させるためには有効な方法です。
但し効果が限定的であったり価格が上がったりと注意が必要な点もあるため、選択の際にはよく確認しましょう。
比較2.メンテナンス性
ホワイトガソリンは一般のガソリンに比べ遥かに不純物が少ない燃料ですが、燃焼時の煤の発生はゼロではありません。
燃焼後には燃焼部やジェネレーター内部などに煤汚れが付着するため、定期的な清掃が必要になります。
またポンピング機構部は摺動により劣化していきますので、潤滑油の塗布や部品交換などのメンテナンスは必須になります。
これに対してガス機器は煤の発生がほとんどなく、また摺動部がないため摩耗による劣化はほぼありません。
一般環境で使用している中では、ガス機器はほとんどメンテナンスすることなく使い続けることが可能です。
扱い易さという面でみるとホワイトガソリン機器よりガス機器の方が断然手軽に扱えます。
然しながらアウトドアギアにおいては手間が掛かることでより愛着が沸き好まれる傾向もあります。
「手軽=優れている」と言う訳ではなく、自分のスタイルに合わせた機器(燃料)を選ぶことがアウトドアを楽しむことに繋がります。
比較3.ランニングコスト
本来は使用するシチュエーションやスタイルで燃料の種類を決めるべきだと思いますが、やはり気になるのがランニングコストです。
今回はほぼ同等スペックであるColeman製のガソリン型とガス型のランタン「ノーススター」を用いて、カタログスペックでの燃料費の比較をしてみます。
ノーススター ホワイトガソリン型の燃費算出
(画像出典:Amazon)
燃料タンクの容量は940ccで、平均10.5時間の燃焼が可能です。
- 光量:360CP
- 燃料タンク容量:940cc
- 燃焼時間:7~14時間(平均10.5時間)
ホワイトガソリンは純正4L缶が¥3,600なので、1時間単位の燃費はおよそ¥80.6となります。
- 燃料定価(税抜き):¥3,600(純正4L缶)
- 計算式:(¥3,600×940cc/4000cc)/ 10.5時間 ≒ ¥80.6/時間
ノーススター ガス型の燃費算出
(画像出典:Amazon)
470gのガスカートリッジを用いた場合、平均6時間の燃焼が可能です。
- 光量:320CP
- 燃料容量:470g
- 燃焼時間:4~8時間(平均6時間)
同様に計算すると、1時間単位の燃費はおよそ¥150となります。
- 燃料定価(税抜き):¥10,800(純正LPガス470g缶12個)
- 計算式:(¥10,800/12個)/ 6時間 = ¥150/時間
定価ベースで比較すると、ホワイトガソリン機器よりガス機器の方が1時間当たりの燃料費が2倍程度高くなります。
燃費だけをとるとホワイトガソリン機器に軍配があがります。
しかしホワイトガソリン機器にはガス機器よりもメンテナンス費用が多く掛かります。
メンテナンス費はどこまで自分で処置するかにもよりますので一概にいくらという試算は出来ませんが、ガソリン機器特有の消耗パーツなどガス機器では不要な支出が必要になります。
これらを含めてランニングコストをみた場合、それほど大きな差はないと思われます。
但しメンテナンスの多くを自身で行ったり、燃料を低コスト版に切り替えて利用するなどすると、ホワイトガソリン機器の方がランニングコストは低くなります。
これはアウトドアのスタイルに大きく影響することでしょう。
比較4.機器の種類
機能から少し外れますが、それぞれの燃料に対する機器のレパートリーについても確認しておきましょう。
ホワイトガソリン機器はシンプルな構造といえど製造には技術が必要なため、製造できるメーカーが限られています。
そのためたくさんの種類の中からお気に入りを探すという事が難しく、特に人と異なる機器を入手するのは至難です。
対してガス機器は様々なメーカーが製造していますので、機能も見た目も自分好みを探し出すことが可能です。
たくさんの種類の中からお気に入りを探して使いたい方は、ガス機器の方が合っているかもしれません。
燃料の比較まとめ
最後に各燃料の特徴をまとめてみましょう。
ホワイトガソリン機器 | LPガス機器 | |
出力の安定性 | 〇 | (低温化に弱い) |
取扱い易さ | 〇 | |
ランニングコスト | 〇 | |
機器の種類 | 〇 |
主機能である火力や光量に対する性能はホワイトガソリン機器の方が優れています。
一方ガス機器は取扱い易さにおいてとても優秀です。
それは今回紹介した操作性やメンテナンス性だけでなく、運搬性においてもです。
ガス機器は、機器本体とカートリッジが分離しているために機器自体が非常に小型で軽量です。
この利点は主機能を凌駕する程で、バックパッカーやスルーハイカーは例え寒冷地に赴く場合でも積載を減らすためにガス機器を選択することもあります。
今回紹介した基本的な機器の特徴は代えがたいものはありますが、シチュエーションに対して優先される機能とは逆に劣る特徴も必ず持ち合わせます。
それを補って使うということはアウトドアの基本でもあり楽しさでもあります。
どの燃料の機器を選ぶかはそれぞれのスタイルに依存し、また初めて燃焼系機器を選択する場合には先を見据えた選択も当然必要です。
しかし長いアウトドアライフにおいて、その時向かう先、その時集う仲間、その時のシチュエーションに対して適する燃料が変わることもあります。
あまり燃料に縛られ過ぎず、もしかすると単に気に入ったという単純な理由で選ぶことが、あなたのアウトドアライフをより充実させるのかもしれませんね。