コンパクトな収納力でパッキングを支援するエアマットは、テント泊登山やバックパックキャンプなどで重宝されています。
エアマットは空気を入れるだけで快適な寝床が確保できるシンプルなギアですが、その構造はそれ程単純ではなく、スリーピングマットの中でも随一と言える程の多種多様な構造的特徴を持っています。
今回はエアマットの基本的な構造と選定方法、そしておすすめを紹介しましょう。
エアマットとは
エアマットはスリーピングマットの一種で、空気圧により断熱性やクッション性を作り出すマットです。
内部構造にフォームが含まれないため、空気を抜くとコンパクトに収納できる事が最大の特徴です。
ザックの容量の削減に貢献すると共に、低労力で素早い片付けを実現します。
エアマットの構造
原始的なエアマットは、2枚のシートが気室を形成するように貼り合わさった構造をしており、注入口から空気を入れると気室が膨らみマットに成ります。
身体と地面の間に空気の層が作られることで、ゴツゴツ感や固さ、冷たさが直に伝わらないようになります。
然しながら空気の層だけでは断熱性がそれほど高くないため、単純な気室だけを備える原始的なエアマットでは使用に限界があります。
夏のみに限定して使用するのであれば、R値2未満の原始的構造のエアマットで十分ですが、春や秋、そして雪の降る冬の使用が想定される場合は、断熱性を高めたR値3以上のマットが必要になります。
R値とは
R値とは断熱性能を表す数値です。
R値が高いほど断熱性能が高く、地面の冷気を表面まで伝え難いマットと言えます。
断熱性能を要しない夏場の使用であればR値は2未満でも十分ですが、3シーズン、4シーズン、更には極寒のシチュエーションが想定される場合には、相応のR値以上の断熱性能を準備する必要があります。
もしひとつのマットで十分なR値が確保できない場合には、マットを2枚重ねるなどの対応でも効果があります。
体感として感じられるように、R値は加算して断熱性を高めることが可能です。
断熱構造の種類
断熱性能の低い原始的なエアマット構造に対し、R値2以上のエアマットには様々な断熱構造が備えられています。
断熱構造は各メーカーがオリジナルに開発しているため、詳細を理解するにはそれぞれのマットの断熱構造を確認するしかありませんが、主に次の3つの構造がメジャーな断熱構造です。
ボックス構造
気室層を2段以上に重ねることで断熱性が格段に上がるため、分割形状は様々ですが多くのブランドでよく見られる技術です。
インサレーション / インシュレート
中空糸は繊維内に空気を蓄えることが出来るため、中空糸繊維を気室内に内蔵することで、気室内の対流が抑制されヒートロスを防ぎます。
更に中空糸はロフトの形成効果が高いため、空気層の厚みを確保し、クッション性においても効果を発揮します。
サーマルミラー
これらの断熱技術は各ブランドの一部の技術で、更にブランド毎に呼称や技術の相違があるため注意が必要です。
また、実際にエアマットに組み込まれる際には、R値のターゲットに合わせて複合的に選択されることになります。
個々のエアマットに使用されている詳しい断熱構造については、それぞれのエアマットの技術ページ等にて確認頂きたいですが、断熱構造の種類に拘らない方やお気に入りのメーカーがある方などは、基本的にR値を目安に選定いただければ良いでしょう。
クッション性
断熱性能と共に重要な性能がクッション性(寝心地)です。
クッション性は実際に触れて試してみないと正確には分かりませんが、試す環境が身近にない方は次の2点を留意して選定すると良いでしょう。
- 厚み
- 気室の分割構造
厚み
厚みはマットを膨らませた時の厚さです。
地面の凹凸を吸収するにはマットの厚みが不可欠で、高いクッション性や平坦度を求める場合はより厚いマットを選ぶと良いでしょう。
気室の分割構造
気室の分割構造はマットにより異なりますが、エアマットは内部にフォームが入っていないため、荷重を支えるものは圧縮された空気です。
原始的なチューブ型気室の場合、ひとつの気室容積が大きいことで空気が動き易く、そのため荷重が加わっても空気が逃げて押し返す力が発生しません。
反対に気室が細かく分割されたマットでは、ひとつひとつの気室セルが十分な反力を発生させると共に、それぞれが半独立的に荷重の影響を受けるため、広範囲で見ると荷重によるマットの変形が少なくなります。
つまり、気室容積が大きいところは柔らかく、時にぶよぶよとした不快な反発となり、反対に容積の小さい気室は張りのある固い反発となります。
但しこの寝心地は気室の分割だけで割り切れるものではなく、ファブリックの種類や厚みにも大きく影響されるため、総合的な判断が必要です。
厳選 エアマット
それではアウトドアでの使用にも耐える、高品質なエアマットの紹介です。
ブランド毎に紹介していますので、R値を目安に各スペックを確認しましょう。
mont-bell / モンベル
構造モデルは1種類のみで、温かい季節を対象としています。
バルブには逆止弁付きのフラットバルブが採用され、空気の注入と排出が簡単に行えます。
ポンプバッグは別売りです。
mont-bell / モンベル
U.L.コンフォートシステム エアパッド
90 | 120 | 150 | 180 | |
サイズ | 50×90cm | 50×120cm | 50×150cm | 50×180cm |
厚み | 7.0cm | |||
ファブリック | 30デニール・ポリエステル・リップストップ[TPUラミネート] | |||
R値 | 未公表 | |||
収納サイズ | Φ8.5×20cm | Φ9×20cm | Φ10×20cm | Φ11×20cm |
重量 | 約294g | 約376g | 約441g | 約514g |
THERM-A-REST / サーマレスト
サーマレストのエアマットには独自のトライアンギュラーコアマトリックス構造が採用され、断熱性能と剛性の高い高反発力を備えています。
バルブにはウィングロック付きの独自バルブが採用され、素早いセットアップと排気、空気圧の微調も簡単に行えます。
THERM-A-REST / サーマレスト
ネオエアーXライト
NeoAir XLite
S | R | RW | L | |
サイズ | 51×119cm | 51×183cm | 64×183cm | 64×196cm |
厚み | 6.4cm | |||
ファブリック | 30D高強度ナイロン | |||
R値 | 4.2 | |||
収納サイズ | Φ9×23cmcm | Φ10×28cm | Φ11×28cm | Φ11×28cm |
重量 | 約230g | 約350g | 約430g | 約460g |
THERM-A-REST / サーマレスト
ネオエアーウーバーライト
NeoAir UberLite
S | R | RW | L | |
サイズ | 51×119cm | 51×183cm | 64×183cm | 63×196cm |
厚み | 6.4cm | |||
ファブリック | 15Dナイロン | |||
R値 | 2.3 | |||
収納サイズ | Φ8×15cm | Φ9×15cm | Φ10×19cm | Φ10×19cm |
重量 | 約170g | 約250g | 約310g | 約340g |
THERM-A-REST / サーマレスト
ネオエアーXサーモマックス
NeoAir XTherm MAX
R | RW | L | |
サイズ | 51×183cm | 64×183cm | 63×196cm |
厚み | 6.4cm | ||
ファブリック | 表面:30D高強度ナイロン 裏面:70Dナイロン |
||
R値 | 6.9 | ||
収納サイズ | Φ10×23cm | Φ10×28cm | Φ11×28cm |
重量 | 約490g | 約610g | 約640g |
SEA TO SUMMIT / シートゥサミット
シートゥサミットのエアマットには、小さな気室が網目のように配置されるエアスプラングセル構造が採用されています。
個々の気室セルが半独立して体圧に対応することで、極上の寝心地を作り出します。
バルブには逆止弁付きのマルチファンクションバルブが採用され、素早いセットアップと空気圧の微調整が簡単に行えます。
SEA TO SUMMIT / シートゥサミット
ウルトラライト インサレーティッドマット
Ultralite INSULATED
X-SMALL | SMALL | REGULAR | |
サイズ | 55×128cm | 55×168cm | 55×183cm |
厚み | 5.0cm | ||
ファブリック | 30/40DナイロンファブリックTPU | ||
R値 | 3.1 | ||
収納サイズ | Φ9×23cm | Φ9.5×23cm | Φ10×23cm |
重量 | 約349g | 約430g | 約480g |
SEA TO SUMMIT / シートゥサミット
コンフォートライト インサレーティッドマット
Comfortlite INSULATED
SMALL | REGULAR | RECTANGULAR | |
サイズ | 55×168cm | 55×184cm | 55×184cm |
厚み | 6.3cm | ||
ファブリック | 30/40DナイロンファブリックTPU | ||
R値 | 3.7 | ||
収納サイズ | Φ10.5×23cm | Φ11×23cm | Φ11×23cm |
重量 | 約590g | 約640g | 約680g |
SEA TO SUMMIT / シートゥサミット
コンフォートプラスXT インサレーティッドマット
Comfort PlusXT INSULATED
サイズ | 64×183cm |
厚み | 8.0cm |
ファブリック | 30/40DナイロンファブリックTPU |
R値 | 4.7 |
収納サイズ | Φ14×28cm |
重量 | 約1,185g |
SEA TO SUMMIT / シートゥサミット
イーサーライトXTエクストリームマット
Etherlight XT
REGULAR | LARGE | RECTANGULAR-RW | RECTANGULAR-L | |
サイズ | 55×183cm | 64×198cm | 64×183cm | 64×201cm |
厚み | 10cm | |||
ファブリック | 30/40DナイロンファブリックTPU | |||
R値 | 6.2 | |||
収納サイズ | Φ17.5×24cm | Φ18.5×28cm | Φ18.5×28cm | Φ18.5×28cm |
重量 | 約720g | 約950g | 約950g | 約1,050g |
NEMO / ニーモ
うつ伏せになっても肘や膝が地面に底付きすることがありません。
バルブには新型フラットバルブが採用され、付属のポンプサックによる素早いセットアップと、指1本で簡単に空気圧の微調性が可能です。
NEMO / ニーモ
テンサートレイル レギュラーマミー
TENSOR™ TRAIL REGULAR MUMMY
サイズ | 51×183cm |
厚み | 9.0cm |
ファブリック | トップ:20D 100%リサイクルナイロン ボトム:40D ナイロン |
R値 | 2.8 |
収納サイズ | Φ9.5×25.5cm |
重量 | 約369g |
NEMO / ニーモ
テンサーオールシーズン レギュラーマミー
TENSOR™ ALL SEASON REGULAR MUMMY
サイズ | 51×183cm |
厚み | 9.0cm |
ファブリック | トップ:20D 100%リサイクルナイロン ボトム:40D ナイロン |
R値 | 5.4 |
収納サイズ | Φ10×25.5cm |
重量 | 約400g |
NEMO / ニーモ
テンサーエクストリームコンディションズ レギュラーマミー
TENSOR™ EXTREME CONDITIONS REGULAR MUMMY
サイズ | 51×183cm |
厚み | 9.0cm |
ファブリック | トップ:20D 100%リサイクルナイロン ボトム:40D ナイロン |
R値 | 8.5 |
収納サイズ | Φ10×25.5cm |
重量 | 約472g |
今回はエアマットの最重要特性でもある「携行性」が活かせるシチュエーションを想定し、性能と品質において安心できるエアマットに絞って紹介しました。
そのため耐久試験や品質検査による作り込みや性能保証もしっかり備わっており、ハードシーンでも安心して長く使い続けられるものばかりです。
数千円でも購入できるエアマットはありますが、やはり性能と品質面において一線を画します。
穴が空いたら使えなくなるのではなく、補修しながらでも使い続けたい信頼できるエアマットに是非出合って下さい。