結露を制したモノフィラメントインナーを特徴とする「ZEROGRAM/ゼログラム」のULテント。
中でもダブルウォールでありながら1kgを切るスルーハイカーは、登山家や長距離ハイカーから高い評価を得ています。
今回紹介するのは、長らく欠品が続いていたスルーハイカーの2023リニューアルモデルです。
バージョンアップの内容と共に、スルーハイカーZBの特徴を紹介しましょう。
【ZEROGRAM】Thru Hiker 1P ZEROBONE
「Thru Hiker 1P/スルーハイカー1P」は高山やロングトレイルを想定したUL仕様のハイカーズテントです。
軽量でありながら居住性にも秀でた特徴を持つ、ハイカーに人気の超軽量テントです。
リニューアルの特徴はその名にもある「ZEROBONE/ゼロボーン」ですが、他にも多くの改良が加えられ、より居住性が向上しています。
更に2024年にはカラーリングを一新し、青みを帯びた美しい白色が映えるスルーハイカーに生まれ変わりました。
まずは従来から備えられているスルーハイカーの特徴からみていきましょう。
スルーハイカー1Pの特徴
スルーハイカー1Pは非自立型のひとり用ダブルウォールテントです。
1本のメインポールと2本のリッジポーが骨格となり、ペグダウンしたフライとのテンションにより立ち上がります。
非自立型であることと、1本のメインポールにより風などの外力を受けきらなければならないため、コンディションに合わせた設営をするなど技術が必要なテントでもあります。
ポールはZEROGRAMの特徴でもあるアウターポール型で、インナーテントはフライに吊り下げる構造です。
フライとインナー、フットプリントは連結したまま収納可能なため、素早い設営が可能です。
出入口は片面1か所に集約され、開口は大きく設けられています。
更に室内頭頂部側に小さな前室を備えているのもスルーハイカー独自の特徴です。
前室が分離された分、出入口側の前室はコンパクトな設計となっており、そのため強風時や雨天時には弱点ともなりえますが、言い換えればこの点を補う力量が悦びに繋がるテントとも言えるでしょう。
モノフィラメント・インナー
スルーハイカーは独特なフォルムに加え、ZEROGRAMの特徴でもあるモノフィラメント・ファブリックを用いたインナーも魅力です。
モノフィラメント(monofilament)は、名前に’モノ’とあるように、1本の繊維で糸が作られ、組織が安定し耐摩耗性に優れています。
テント素材としては特殊ですが、身近には歯ブラシのブラシやラケットのネットの部分に使われています。
テントのインナー素材として限りなく薄く作られたモノフィラメントは、メッシュのような通気性を持ちながら撥水性に優れ、より軽く、より優れた強度がある素材です。
通気性と撥水性があることで、例えばインナーテント内部で発生した水分を含む空気が結露としてフライについてもインナーテントに戻ることはほぼありません。
また撥水加工をしていないのでその効果は永久的に保たれます。(出典:ZEROGRAM)
優れた通気性を持ちながら撥水性をも備えたモノフィラメントは、通気による室内環境の改善とインナー内への結露の侵入を防ぎます。
循環性能の高さ故、ダブルウォールに期待される保温性は高くはありませんが、結露に対するウォール構造としては卓越しています。
結露からインナー内を守れるという事は、すなわちシュラフなどの濡れては困るものも濡れにくくなり、更にシチュエーションによってはギアの削減も行えるでしょう。
スルーハイカーZBでの改良点
ここまでは従来のスルーハイカーにも備わる特徴でしたが、ここからはスルーハイカーZBでの改良点をピックアップします。
スルーハイカーZBの改良点は、一言で表すと「安定性と快適性の向上」です。
ひとつ目はその名にもある「ZEROBONE」です。
ZEROBONE ULポール
従来モデルはDACポールを採用していましたが、2023モデルからはZEROBONEポールとなっています。
どちらもジュラルミンを素材としたポールですが、ZEROBONEは軽量さと強靭さ、そしてしなやかさを備えたZEROGRAMオリジナルポールです。
製造工程での化学物質の使用を極力抑え、環境負荷を抑制した取り組みもZEROGRAMの特徴です。
ポールの改良点は材料だけではなく、フライにテンションを張るリッジポールの形状にも加えられています。
従来モデルではストレートだったリッジポールですが、ZBモデルではフライの形状に合わせた湾曲が設けられたことで均等なテンショニングが可能になり、風をよりスムーズに受け流すことが出来るようになりました。
均等なテンショニングはインナーを理想的に持ち上げ、室内の広さ、特に全高が上がり、快適性が向上しています。
更にメインポールの節の長さがリッジポールの分割長さと同じ長さに調整され、パッキングのコンパクト化も図られています。
ZEROBONE ULペグ
ポールと合わせてペグもZEROBONE使用に改良されています。
素材性能はポール同様にZEROGRAMオリジナルへと更新され、更にペグの形状変更による機能改善も行われています。
従来モデルは一般的なVペグ形状でしたが、ZBモデルではY字寄りのV形状に改良され、強度が向上しています。
更に首下に波型形状を設けることで、地に食いつき抜け難くなっています。
重さは1本7gです。
ベンチレーション
ZBモデルで大きなシステム変更となった箇所がベンチレーションです。
スルーハイカーはモノフィラメントによる結露リスクの低減が特徴のひとつですが、合わせて地面にまで届くフライによる保温性能も特筆すべきポイントです。
一般的にULテントとなるとフライの面積を削ぐことで軽量化が図られ、その結果フライの裾と地面との間には空間が作られます。
これは軽量化目的だけでなくベンチレーションも兼ね、結露の抑制が考慮されたフォルムでもありますが、結果的に風の吹き込みへのケアが必要になります。(融通が利くという点ではメリットでもあります。)
スルーハイカーはモノフィラメントによる通気性に優れたインナーを搭載しているため、フライでの防風、保温が求められ、結果的にフライは地面まで届く遮蔽性の高いフォルムを取っています。
このフォルムは好みによるところはありますが、結果的にフライから外へのベンチレーション性能は低くなり、フライへの結露を防ぎきることは困難でした。
ベンチレーターの位置は側面から背面に移され、サイズはおよそ2倍の開口面積に拡大されています。
フロント開口部から取り込んだ空気が滞ることなく上部へ流れるようになり、結露の抑制や夏場の温度上昇を防ぐ効果が期待できるでしょう。
オールインワン
ZBモデルではオールインワンパッケージとなります。
従来モデルでは含まれていなかったガイラインとフットプリントが標準で含まれる構成です。
また専用のフットプリントにも変更が入っており、ZBモデルでは頭頂部前室にあたるシート部が削減されています。
従来モデルからのユーザーは注意が必要です。
スペック
カラーはTAN(タン)1色のラインナップです。
また、スタッフサックがロールトップタイプとなり、従来モデルより圧縮し易くなりました。
outer 270(L) x 95(front) x 85(rear) × 106(H)cm
inner 210(L) x 85(front) x 65(rear) × 100(H)cm
・重量
minimum 978g , packing 1206g
・ファブリック
fly:15D N/R silicone/PU coated
inner:20D monofila
floor:15D N/R silicone/PU coated
pole:ZERO-BONE UL(ジェラルミン)
まとめ
軽量でありながら居住性に優れたスルーハイカー。
登山やロングトレイルでのUL装備としても優秀なギアです。
従来モデルからリニューアルされたことでより安定性や居住性に磨きがかかったスルーハイカーZBは、正に向かうところ敵なしのモデルでしょう。
ZEROGRAM / ゼログラム
スルーハイカー1P ゼロボーン
Thru Hiker 1P ZEROBONE
サイズ |
アウター:270(L)x95(front)x85(rear)×106Hcm インナー:210(L)×90(front)×70(rear)×100Hcm |
ファブリック | フライ:15D N/R silicone/PU coated インナー:20D monofila ボトム:15D N/R silicone/PU coated |
ポール | ZERO-BONE UL(ジュラルミン) |
重量 | ミニマム:約978g パッケージ:約1206g |
構成 | フライ、インナー、ポール、ペグ6、ガイライン2、フットプリント、スタッフサック |
収納サイズ | 14×14×39cm |
その他 | 前室1、ベンチレーション1、出入口1、ランタンフック2、ポケット1 |