目新しいギアがどんどん出てくるキャンプ市場。
話題になりそうなギアとして、最近目にした銅製の焼肉プレートもそのひとつ。
熱伝導率が高いことで食材をおいしく焼き上げると謳われ、見た目の破壊力と共に興味を掻き立てられる鉄板成らぬ銅板です。
魅力、メリットは勿論あるギアですが、使用する上では注意すべきこともあります。
今回は安全に銅板料理を楽しむための注意点や適した調理について紹介したいと思います。
銅製調理器具について
日本ではプロの料理人が好んで使用する調理器具と認識されていますが、ヨーロッパでは今も昔も家庭の調理器具として一般的に活用されている道具です。
銅製の調理器具で一般的なものは銅鍋です。
それは銅の性質が最も活かされる調理が鍋を使用した調理だからに他なりません。
銅が調理器具の材料として選ばれる最も明確な理由は高い熱伝導率です。
金属材料の中では銀に続く2番目に高い熱伝導率を誇り、続いて金、そして4番目がアルミとなります。
アルミは調理器具の材料として最も広く活用されており、その理由は軽さ、錆び難さ、加工のし易さなどの調理器具として利点を多く備えた材料であることと、上位3つの材料に比べ安価に製造できることにあります。
性能と価格のバランスを見ると一般調理器具としてアルミが選ばれるのは必然ですが、熱伝導率から見ると銅とアルミの間には2倍近くの差があります。
高い熱伝導率のメリットとは
熱伝導率は熱の伝わり易さを表す特性値です。
熱伝導率が高い材料の調理器具では、熱ムラに対して温度平衡が取られるまでの時間が早くなります。
また、底面だけを見れば火口の形状次第になりますが、鍋型の調理器具の場合には側壁へも熱を伝へたいと考えると熱伝導性は重要な特性になります。
では熱伝導率が高いことによるメリットは何かといういうと、これは実に限られており、大きくふたつです。
ひとつは先程からの内容のように、熱ムラの抑制です。
調理器具の熱ムラは食材の火の入りにムラを作り、焼き加減の制御や水分、うまみ成分の流出につながります。
もうひとつは省エネです。
短時間で全体が熱せられ直ぐに調理に取り掛かれるため、火力を調理エネルギーへと変換する際の加熱ロスを抑えることが出来ます。
これらのメリットが活きる多くの料理は鍋を使用したもののため、銅製調理器具の主流が銅鍋となっている訳ですが、フライパンやミルクパンなど弱火調理の中でも均一な熱入れが好まれる料理に対する調理器具も用意されています。
銅製プレート
銅の特性を取り込んだ焼板。
本質としては低火力で熱ムラを抑えた調理を可能とするギアです。
得意料理はパンケーキやムニエル。
銅を活かし拘れば他にない良さを発揮します。
但しそれだけでは活用の幅が限定され、アウトドアに適した調理器具とは成り得ないでしょう。
そこで重要なのは十分な板厚です。
蓄熱性の高いものであればステーキ肉もジューシーに焼け、且つ熱量低下への立ち直りも俊敏な焼板として高い性能を持ちます。
美しい銅の風合いと特性をキャンプで活かすには、鉄板の基本である蓄熱性にも着目することが必要でしょう。
銅中毒とは
分厚く熱伝導率の高い銅板は優れた性能を持つ焼板と成り得ますが、鉄製の鉄板にはない、食の安全に関する使用上の注意があります。
それが銅中毒です。
腹痛や嘔吐、ひどい場合には肝硬変や死に至ることもあります。
ポイントは”大量に摂取した”場合であり、もともと銅は体内に必要とされるミネラル成分のひとつです。
然しながら現代の食生活において銅ミネラルが欠乏することはないとされていますので、鉄ミネラルを取るために鉄鍋を使用するような感覚で銅鍋、銅板を使用する必要はありません。
むしろ銅の過剰摂取を防ぐために次の事に気を付けなければなりません。
- 調理後、銅板の上に放置しないこと
- 酸性の材料を調理しない、または短時間とすること
いずれも銅が食材へ溶け入ることを防ぎ、銅の過剰摂取を防ぐための必須事項です。
特に酸性の材料と言うのは気付き難いもので、例えば焼きそばのソースも酸性です。
一般的な銅鍋と異なり、焼面にメッキ処理のない銅製焼板は特に注意しないと銅が溶け出し食材に混入します。
銅中毒を起こさないよう常に配慮が必要ですが、厚さのある銅板を調理器具とすることで新たな食の楽しみを味わえる事でしょう。