世界にひとつだけの自分好みのモノが作れるとあって、おうち時間に挑戦する人が増えてきているDIY。
中でもレザークラフトは、革独特の雰囲気がアウトドアと合うためキャンパーにも人気のDIYです。
革製品は耐久性や耐熱性、引張強度に優れ、更に汚れも味わいにみえるなどアウトドアと非常に相性の良いアイテムです。
そんな革製品を自分で作ってみたい方のために、今回は初めてでも簡単に作れるスキレットハンドルカバーの作り方を紹介します。
スキレットハンドルカバーを作ってみよう
スキレットとは鋳鉄製のフライパン形状の調理器具です。
(画像出典:Amazon)
一般的なフライパンと異なり、素材の厚みが厚いため調理時の熱ムラが抑えられ、更に鋳鉄に染み込む油やうまみ成分が、使えば使う程に料理に深い味わいを加えてくれる優れた調理器具です。
キャンプでは焚火などに直接乗せて調理が出来るなど、使い勝手もよく人気のアイテムです。
今回レザークラフトで挑戦するアイテムは、スキレットのハンドル部に取り付けるカバーです。
スキレット所有者のほとんどが持っていると言っても過言ではないアイテムですが、おうち時間を利用して世界にたったひとつのハンドルカバーを作ってドレスアップしてみましょう。
デザインを決め型紙を作る
まず元となるデザインを決めます。
等倍で考えると出来栄えが想像し易いので、コピー用紙などのデザイン用紙にスキレットを反対向きに置き、ハンドル部の外形を鉛筆でなぞり転写します。
次に転写したハンドルの外形図に対してカバーのデザインを描きます。
デザインで迷いそうな方は、予めハンドルの外形をボールペンでなぞっておきましょう。
カバーはスキレットより大きくなるイメージで描きます。
今回は1枚の革を折り畳んで作るため、折り畳む辺は直線になるようにデザインします。
あとはカバーが取り外し出来るよう口元は狭め過ぎないよう注意です。
デザインに迷った線がいくつか残っていますが・・・、今回はこんな感じで作ろうと思います。
アクセントのリベットがポイントです。
次はデザインを元に型紙を作ります。
先ほどと同様、型紙となる紙にスキレットの外形を転写します。
その後、スキレットの外形に対して決めた寸法通りにデザインを製図します。
今回使用する革は厚み2mm、スキレットは最も太い箇所で厚み10mmです。
縫い代は3mmとなるので、これを考慮すると・・・。
折り畳み側はスキレットの厚みが丁度半分になる所を端面とします。
反対側は抜き差しや誤差を考慮してあそび代を3mm設け、そこから一番狭い端面まではスキレットの厚みの半分5mmと縫い代3mmを加えた8mmとります。
ハンドルの突き当て部には、スキレットの厚み半分と縫い代分の8mmとります。
型図の外形通りに切り抜けば、型紙の完成です。
ベース革の切り抜き
次に、スキレットハンドルカバーのベースとなる革を切り抜きます。
革に型紙を当て、外形を鉛筆でなぞり形状を転写します。
折り畳む辺で型紙を反転させ、対面側の形状も転写します。
型紙の転写が出来たら革包丁などで切り抜きます。
柔らかい革であればハサミでも切断出来ますが、端面が綺麗に仕上がらないため専用の道具がやはりおすすめです。
次は切り取った革の処理です。
表面処理をすることで毛羽立ちを抑え、艶を出し、長持ちさせることが出来ます。
銀面コート
まず銀面(表面)から処理をします。
銀面には保護膜となるコート剤を塗ります。
コットなどにコート剤を染み込ませ、ムラが出ないように万遍なく塗ります。
大きな範囲を一度に塗ろうとせず、小さな円を描くように徐々に広げていくと良いでしょう。
上の写真では上半分がコート剤が塗ってあり、下半分が塗っていない状態です。
今回選んだ革は色の変化がないので分かり難いですね。
それでも汚れなどに強くなりますので、塗り忘れがないように丁寧に処理しましょう。
コート剤は5分程度で乾きますので、乾いたら床面(裏面)の処理を行います。
床面磨き
床面は磨きと呼ばれる処理を施します。
床面に磨き剤をのせヘラで伸ばし、磨き棒やガラス板などで軽く押し当てながら全面を磨きます。
(今回はベロア床革のため毛足が長いですが、一般的な床面は毛が短くざらざらしています。)
銀面に磨き剤が付着すると変色するため注意が必要です。
もし銀面に磨き剤が付いた場合は、コットンなどですぐに拭き取りましょう。
全体を万遍なく磨いたら、一旦磨き剤が乾くまで待ちます。
表面の毛羽立ちが収まり、滑らかな肌触りになるまで繰り返し磨きます。
(今回は裏地で全く見えなくなるため毛を固めて終わりとします。)
床面を磨き終えたら、次はコバ(切断面)磨きです。
コバ磨き
コバは革の切断面のことを言います。
どんなにきれいに切断しても、使い続け幾度と擦れると切断面からボロボロになり始めます。
コバ磨きはコバを滑らかにすると共に耐久性を上げる処理になります。
まずコバの状態を整えます。
コバを全周確認し、ひどく荒れている部分があれば紙やすりなどで磨きます。
今回のように毛の長い革の場合には、床面磨きの際に型から毛がはみ出す場合がありますので、それらもカッターなどで切断しておきます。
コバの状態が整ったら、少量の磨き剤をコバに塗り、帆布やスリッカーで磨きます。
コバを丁寧に処理することで、長期にわたり美しい状態が保たれるようになります。
銀面(表面)、床面(裏面)、コバ(切断面)の処理が完了したら、ベース革の完成です。
縫い穴を開ける
ここから縫製の工程に入ります。今回は手縫いで作りますので、糸を通す穴を予め準備することになります。
まず革に縫い線の目印となるケガキ線を入れます。
ディバイダーの幅を3mmに合わせケガキます。
もちろん縫い線となる箇所のみなので、口元となる箇所などに誤ってケガキを入れないように注意しましょう。
ディバイダーの片側を革の端面に当てながら、薄くケガキ線が付くように力を入れて引いていきます。
次に縫い穴をあけます。
ケガキ線上の端から3mmの位置に1つ目の縫い穴がくるように、2本ヒシ目打ちで縫い穴をあけます。
次に2つ目の穴に2本ヒシ目打ちの片側を合わせて、3つ目の縫い穴をケガキ線上にあけます。
既にあけた穴にヒシ目打ちの片側合わせることで等間隔に縫い穴をあけることが出来ます。
縫い穴を全部あけ終えたら、次にリベット用の穴をあけます。
リベット穴を抜く
まず片側の穴をハトメ抜きで打ち抜きます。
縫い穴が合うようベース革を折り返し、反対側のリベット穴の目印を付けたらハトメ抜きで穴をあけます。
折り返したベース革の縫い穴を合わせるには、上の写真のように縫い針を通すと位置が決め易くなります。
ベース革への穴あけが完了したら、次は縫製のための糸を準備します。
縫糸のロウ引き
レザークラフトでは一般的な布を縫う裁縫に比べ糸への負担が大きくなります。
硬い革の間を幾度と通る糸は次第に摩耗し、やがて切れてしまいます。
これを防ぐためにレザークラフトで使用する糸にはロウ引きという作業を行い、糸を補強してから縫製に使用します。
ロウ引きはロウソクなどのロウの固体に糸を当てながら引くことで、ロウを糸に塗り込む作業です。
端から端までのロウ引きを5回程繰り返し、十分なロウを糸に塗り込みます。
ロウ引きが面倒な方は、ロウ引き済みの「蝋引き糸」を使用すると便利でしょう。
縫製
ではベース革と縫製糸の準備が整ったところで、いよいよ縫製です。
まず縫いやすいようベース革を折り畳んでクリップで固定します。
今回は基本の平縫いで縫い付けますので、糸は縫い線の4~5倍の長さを準備します。
平縫いは糸の両端を交互に縫う縫い方で、縫い目が丈夫で耐久性があります。
糸を1つ目の穴に通し、糸の長さのおよそ半分の位置まで通します。
ここから2つ目の穴に平縫いをはじめても構いませんが、補強のために革端に締結しておきましょう。
奥の糸を革の端を介して1つ目の穴に手前から通すことで輪を作ります。
もう一度通して輪を二重にし、締結します。
その後、同じ糸の端を奥側から2つ目の穴に通します。
(平縫いの開始です。)
次に反対側の糸の端を、先程糸を通した2つ目の穴に手前から通し、奥へ抜きます。
この時先に通した糸の間を針が抜けないよう、また縫い目が揃うよう先に通した糸を1つ目の穴側(左側)に寄せながら、針は右側を通すようにします。
両側の糸が2つ目の穴を通ったところで均等に締めればひとつの縫い目が完成します。
これを繰り返し行います。
半分程まで進みました。
今回は糸が細いため目立ちませんが、針の通し方や糸の引き方が都度異なると縫い目が揃わず見た目が悪くなります。
革の処理同様、縫い目はレザークラフトの見栄えに大きく影響しますので、丁寧に行いましょう。
最後の穴まで通したら縫い終わりの処理をします。
縫い始めと同様に、革の端に補強の輪を作ります。
手前の糸は革端を介して最後の穴に奥から手前に通します。
輪をひとつ作ったら、1つ前の穴に手前から通し、革と革の間から抜きます。
同様に奥側の糸も革端に輪を作り、奥から革と革の間に通します。
出てきた2本の糸をコマ結びで留めます。
最後に糸を通した、後ろから2つ目の穴の根元に結び目がくるようしっかり結びましょう。
糸を結び目の根元で切り、結び目が緩まないよう木工ボンドなどで固めます。
ボンドを結び目に付けたら、外から見えないよう針を使って革の中に押し込んでおきましょう。
完成
最後にアクセントとなるリベットを打ちます。
リベットをカシメ打ち棒と台、金槌を使って打ち込みます。
リベットが取り付いたら完成です。イメージ通りに出来たのではないでしょうか。
レザークラフトをはじめてみよう
今回はアウトドアの定番アイテム「スキレットハンドルカバー」を作ってみました。
手間は掛かりますがそんなに難しくなく誰でも作ることが出来ますので、是非挑戦してみてください。
おうち時間の有効活用にもピッタリです。
最後に使用した道具や材料をおさらいしておきましょう。
レザークラフトの道具
今回使用した道具は次のものになります。
(日用品は除いています。)
- 革包丁:革を切断する時に使う道具
- ガラス板:床面を磨く時に使う道具
- スリッカー:コバを磨く時に使う道具
- ディバイダー:縫い線をケガク時に使う道具
- ヒシ目打ち:縫い穴を開ける時に使う道具
- ハトメ抜き:リベット用の穴を開ける時に使う道具
- 金槌:穴を開ける時に使う道具
- 縫い針:縫製の時に使う道具(裁縫針より太い)
- カシメ打ち棒・台:リベットを打つ時に使う道具
上のリストはスキレットハンドルカバーを作るための最低限の道具です。
キーホルダーや財布、バッグなどを作るには他にも道具が必要になります。
基本的な工具がひとまとめになったセット品もありますので、これからはじめる方にはセット購入がお得なのでおすすめです。
レザークラフト工具セット
(画像出典:Amazon)
レザークラフトの材料
今回使用した素材や消耗品は次のものになります。(一般的なものから選んで紹介します。)
- 革:ベースとなる革
- 蝋引き糸:レザークラフト用の蝋引きされた縫い糸
- レザーコート:銀面に塗るコート剤
- トコノール:床面、コバに塗る磨き剤
- リベット:アクセントや革と革を留める時に使う金具
意外と手間の掛かるレザークラフトですが、だからこそ完成時の喜びは一際高く、愛着も沸いてきます。
レザークラフトであなただけの、一生物のアイテム造りに是非挑戦してみてください。